写真の納品ファイル何がいい?撮影前に知りたい「ファイル形式・フォーマット」
「写真を撮影するだけ」までがカメラマンの仕事ではありません。
撮影から納品まで、クライアントのニーズに完璧に応えるためには、写真データの扱い方が非常に重要です。
写真データは、その形式やサイズによって、画質、ファイルサイズ、そして使いやすさが大きく変わってきます。
高画質で美しい写真に仕上げることはもちろん、クライアントがスムーズにデータを利用できるよう、適切なファイル形式やサイズを選択する必要があります。
この記事では、カメラマンが一度は直面する「納品データの悩み」を解決するために、用途に合わせた最適なファイル形式・フォーマットの選び方を、実務に基づいて解説します。
目次
1.納品後の利用用途を明確にし、理解する
クライアントの要望を正確に理解し、それに応えることが重要です。納品サイズについても、事前にクライアントと綿密なコミュニケーションを取りましょう。
まずはじめに、Webサイト、印刷物、SNSなど、写真がどのように使われるのかを明確にし、「解像度」「ピクセル数」を選定し、「必要なカメラの画素数」を導き出します。
そのうえで、仕様を事細かに理解するより、「写真の利用用途にあった形式」を軸に知っておくことで、効率的に理解し、最適な形式を柔軟に対応することができます。
写真の利用用途にあった形式一例
用途 | 解像度 | ピクセル数(目安) | カメラ画素数の目安 |
Webサイト | 72dpi | 1000px × 1500px程度 ※1 | 800万画素程度 |
印刷物(チラシなど) | 300~350dpi | 用途に合わせて算出 | 2400万画素以上 |
ポスター | 200~266dpi | 用途に合わせて算出 | 2400万画素以上 |
※1…納品画像をそのまま使用する場合のピクセル数を明記。
用途に合わせた算出方法について
印刷物やポスターなどに必要なピクセル数は、印刷物のサイズや設置場所と印刷工程に合わせて算出する必要があります。
例えば、
・チラシのように近くで見るもの
高解像度でピクセル数が豊富な程綺麗に仕上がります。
但し、解像度高すぎたり、ピクセル数が多すぎると、データが重くなり、印刷所での処理に時間がかかったり、不要なモアレが発生する可能性があります。デザイナーや印刷会社と相談しながら、最適な納品サイズを選定しましょう。
・屋外看板や展示会ポスターのように遠くから見るもの
印刷物としてチラシ同様の高解像度な画像を使用しても、実際の印刷物ではその細かさが人間の目で識別できないため、高解像度であるメリットを活かすこともできず、かえってデータが重くなります。
印刷方式や用紙の種類、鑑賞者の距離感を考慮し、印刷会社やデザイン会社に相談し、適切な品質を実現することのできる納品サイズが求められます。
カメラの画素数について
高画素数カメラで撮影した画像であればあるほど、トリミングや拡大しても画質が劣化しにくいため、様々な用途に対応できるメリットがあります。
ただし、画素数が増えれば増えるほど、データ容量が大きくなり、相応のスペックのある作業環境が必要となるので、必要に応じて、こちらでのサイズ調整や必要なカメラの選定が必要になります。
【参考:同じピクセル数でも、解像度によって印刷物の大きさが変わる】
同じピクセル数でも、解像度によって印刷物の大きさは変わります。
印刷物用のデータを作成する際は、解像度と印刷サイズの関係をしっかりと把握し、最適な設定を行うようにしましょう。
実際のサイズの違い
同じピクセル数「幅6000px高さ4000px」で解像度「350dpi」と「200dpi」を参照
350dpiの場合
高解像度なので、1インチあたりの情報量が多くなり、鮮明に印刷時のインクが使われます。幅43㎝、高さ29㎝はA3サイズよりも少し大きめ、B4サイズよりも少し小さいサイズです。
200dpiの場合
350dpiに比べて、1インチあたりの情報量が少ないいっぽう、より大きな印刷物になります。幅76㎝、高さ50㎝はA1サイズよりやや小さいサイズです。
結論として、解像度が高いほど、印刷物は小さくなる、解像度が低いほど、印刷物は大きくなります。
解像度をキープしながら、より大きなサイズが求められる場合は、ピクセル数を確保できる高画素カメラが必要になります。
撮影後、利用用途が変更になった場合の対応
撮影後に、用途が変更・追加になった場合は、焦らず慎重に対応することが大切です。
特に多いのが、撮影依頼時、Web用として撮影した写真を、「印刷にも使用する」という変更です。
撮影後に、印刷用として使用したいとなった場合は、解像度を350dpiに変更し、印刷物のサイズに合わせて、ピクセル数を変更しましょう。
理由として、解像度を下げる場合、基本的には大きな問題はありませんが、解像度を上げる場合、元の画像の品質によっては問題が発生する可能性があるためです。
例えば、350dpiから72dpiへ解像度を下げるということは、画像情報を減らすことに相当します。
この場合、色の情報を間引くように調整が行われますが、人間の目ではほとんど差を感じないレベルです。(ただし、極端に細かいグラデーションやノイズが多い画像など、一部のケースでは色の変化がわかる場合があります。)
一方、72dpiから350dpiへの変更する場合、 元の画像の品質によっては問題が発生する可能性があります。
解像度を上げるということは、画像情報を増やすことになります。この際、編集ソフトによって自動で情報を補完するため、意図しない色の変化やノイズが発生すし品質に影響を及ぼします。
このように、撮影後に、用途が変更・追加になった場合は、焦らず慎重に対応することを心掛けましょう。
2.納品後のデザイン・編集工程を考慮する
写真が実際に誰が、どこで、どのように編集を行うのかを含め、画像の使用される工程とのバランスも考慮し、クライアントが自由に画像を加工できるように、編集しやすい形式で納品することも大切です。
その結果、クライアントが自由に画像を加工できることで、より幅広い用途に画像を活用を促すことや、画像を加工、閲覧できないといったトラブルを未然に防ぐことができます。
ポイントとなるのが、「ファイル形式」と「色空間(カラーモード)」です。
ファイル形式とカラーモードの一例
用途 | ファイル形式 | カラーモード |
Webサイト | JPEG | sRGB |
印刷物(チラシなど) | TIFF | Adobe RGB |
ポスター | TIFF | Adobe RGB |
ファイル形式の選び方
JPEG
Web用や一般的な画像に最適。画質とファイルサイズのバランスが良く、web掲載にそのまま使用することができたり、特別な作業環境がなくても、トリミングやリサイズが可能です。
一方で、高度な画像編集を行うことで、画像の品質に影響を及ぼす可能性があります。
TIFF
高画質を保ちたい場合や、編集を繰り返す場合に最適。
デメリットとして、ファイルサイズが大きくなる傾向と、TIFFの編集が可能な作業環境が必要なため、環境の確認が必須。また、TIFFのまま印刷物には使用はできません。
PNG
透明背景の画像や、画像の品質を損なわずに圧縮した画像が必要な場合に最適です。
注意点として、PNGの場合、対応していないWEBサーバーやサービスもあるため注意が必要。また、PNGのまま印刷物には使用はできません。
色空間(カラーモード)の選び方
色は、撮影時のカメラ設定や、編集ソフト、そして最終的な出力先である印刷物やWebサイトによって調整が行われますが、写真を納品する場合に気を付けておくべきなのは、色空間(カラーモード)です。
画像の色空間(カラーモード)の選択は、使用する媒体や目的によって異なるため、慎重に行う必要があります。
写真では基本的には、RGBを使用し、「sRGB」もしくは「Adobe RGB」を使用するのが一般的です。
・sRGB
Web上で最も一般的なカラーモード。ほとんどのディスプレイや印刷において正確な色が再現される。
一方で、色域が狭いため、カタログなどの製品の色の再現が必要な調整が行われる場合、再現できない場合がある。プロ向けの印刷では、色域が不足し、モニターで見たままのカラーでの印刷との差が大きく出てしまう場合がある。
・Adobe RGB
sRGBよりも広い色域データを保持しているため、編集を加えることプロ向けの印刷物に適している。
一方で、sRGBよりファイルサイズが大きくなり、sRGBに対応していないディスプレイでは、色が正しく表示されない場合があります。
また、WEB掲載の際は、sRGBへの変換が、印刷時にはsRGBもしくはCMYKへの変換が求められるため、扱いには相応の知識が必要です。
撮影時の設定
カメラの設定で、sRGBかAdobe RGBのどちらかを選択できます。
sRGBを選択することで、後々の編集の手間を省ける一方、印刷物も視野に入れている場合は Adobe RGBを選択し、RAWで撮影することで、より多くの情報を保持し対応することが可能になります。
色空間(カラーモード)の選定はモニター環境が必須
一方で、sRGBとAdobe RGBでは、表現できる色の範囲が異なるため、正確な色を確認するためには専用のモニター環境と画像の調整(キャリブレーション)が必要となります。
ここでは色の統一方法についての説明は割愛しますが、
どうしても、専用のカラーモニターや環境等が整備できない場合は、カメラの設定も含め、sRGBで統一することで、色の差を最小限に抑えるようにしましょう。
色空間の選択は、写真の色を正確に再現するために非常に重要な要素です。撮影の段階から、最終的な出力先までを見越した色管理を行うことが大切です。
3.納品時の現像設定の注意点
使用用途に応じた、最適なファイル形式・フォーマットを選択できた後は、その用途に応じた現像・書き出し設定もカメラマンとしては重要となります。
ここでは一例を紹介します。
Webページ用の場合
現在ではPCよりも、スマートフォンやタブレットでの閲覧が高まりつつある。
そのなかでも、AdobeRGBやHDRなどの高色域モニターを搭載している機種も増えてきていますが、事実上の標準としてはsRGBをベースに考えた色調整が求められるほか、PCだけでなく、スマートフォンでのカラーチェックをおすすめします。
また、WEBで使われる画像として最大でも1920ピクセルであり、ほとんどのカメラの画素数と大きく剥離しています。
多画素で細やかに記録されていたディティールも、縮小・拡大のリサイズによってシャープ感が失われてしまう場合はあります。
その場合のシャープ編集を推奨、アドバイスを行う等の対応を考慮しましょう。
商用印刷用(デザイナーや編集が入る場合)の場合
チラシやポスター等の場合、デザイナーや編集部、印刷会社に応じて様々なパターンや編集が行われるため、Adobe RGBでの納品することが通例となるが、必ず形式を確認し、指定された形式での納品を心掛けましょう。
印刷用(デザイナーや編集が入らない場合)の場合
状況によっては、クライアント自身が編集・印刷を行う場合があります。
カメラマンとしては、必ず印刷会社指定のカラーモードへの変換(CMYK)が必要であることなどの助言を含めたサポートを可能な範囲で行いましょう。
カメラマン側で色空間(カラースペース)を変換する場合
現像、書き出し設定において、色空間を変換する場合、色合いの予測プレビューの確認など)が可能な作業が必要です。
<AdobeのPhotoshopの場合>
メニュー>編集>「プロファイル変換」 での変換を行いましょう。
「プロファイル変換」を使用すれば、現在の色空間(カラースペース)を確認できるほか、「マッチング方法」でどのようにプロファイルを変換するかを選択できる。
この選択方法の基準は様々ありますが、特定の指定などが無い場合は、変換前の色との差が小さいものを選びましょう。
まとめ
納品サイズは、単に数値を決めるだけではなく、クライアントの要望、画像の用途、そしてプロとしての知識を総合的に判断し、決定することで、より最適なニーズを満たす納品を行うことが可能になります。
この記事が、あなたの納品作業を少しでもスムーズにする一助になれば幸いです。
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